はじめに:AIで決算分析する時代へ
「決算書って難しそう…」
「専門家じゃないと数字を読み解けないのでは?」
そんなふうに感じたことはありませんか?
企業の決算情報は、投資判断や企業分析の大切な材料ですが、数字や用語の多さに圧倒されてしまう方も多いでしょう。
でも実は、今はAIを使えば、誰でも手軽に決算分析ができる時代になっています。
なかでも「ChatGPT」を使えば、決算情報を入力するだけで、AIがポイントをわかりやすく解説してくれます。
そもそも決算分析とは?
収益力の把握
- その企業が“本業”でどれだけ利益を稼いでいるかを確認。
安全性の確認
- 借入金や自己資本の割合から、万一の業績悪化時に耐えられる余力があるかをチェック。
成長性の評価
- 売上や利益が年々増えているか、売上構成や販管費の動きにムダはないかを探る。
投資判断の裏付け
- 株式を買う・売るタイミングや、長期保有する価値があるかを数字で判断する。
代表的な財務指標
指標名 | 何を見る? | 計算式 |
---|---|---|
売上高 | 事業規模。前年・同業他社との比較が基本 | — |
営業利益 | 本業のもうけ具合を見る | 売上高―売上原価―販売費及び一般管理費 |
ROE(自己資本利益率) | 自己資本に対してどれだけ利益を上げたか | 当期純利益 ÷ 自己資本 ×100(%) |
自己資本比率 | 返済不要資本が資産全体に占める割合 | 自己資本 ÷ 総資産 ×100(%) |
営業利益率 | 売上に対してどれだけ効率良く稼いだか | 営業利益 ÷ 売上高 ×100(%) |
ROA(総資産利益率) | 全資産を使ってどれだけ稼いだか | 当期純利益 ÷ 総資産 ×100(%) |
個人投資家に必要な最低限の知識
- 決算発表サイクル
- 四半期ごと(3カ月、6カ月、9カ月)と期末(12カ月)に発表される。発表直後は株価が大きく動きやすい。
- 決算短信の読み方
- まず「売上高」「営業利益」「通期予想」の欄をチェック。特に通期予想の上方修正・下方修正は要注目。
- セクター比較
- 同じ業種・同規模の企業と指標を比較し、過大評価や過小評価されていないかを判断。
- キャッシュフロー確認
- 営業CFがプラスで安定しているか、投資CF・財務CFの動きに無理がないかを見る。
- IR情報の活用
- 会社説明資料や決算説明会動画で定性情報(新規事業、海外展開など)もあわせてチェックする。
ChatGPTで決算分析ができる理由
ChatGPTは自然言語処理AIだから
ChatGPTは膨大なテキストデータで学習した自然言語処理モデルです。そのため、数字や専門用語を含む文章を理解し、要点を抽出する能力に長けています。決算書の数値をただ羅列するのではなく、「売上高が前期比10%増加した」「営業利益率が業界平均を下回っている」といった文章としての説明を自動生成できます。
「数字」と「指標」を入力すれば簡単に分析コメントを出せる
売上高:5,000百万円(前年同期比+8%)
営業利益:600百万円(同+5%)
自己資本比率:35%
ROE:12%
上記のように決算主要数値をチャット画面に貼り付け、
「これらの数値から気を付けるべきポイントを教えて」
と問いかけるだけで、分析コメントが返ってきます。
細かな式や業界知識を書き連ねる必要はありません。
会計や財務の専門知識がなくても使える
- 専門用語の定義も質問できる
「営業利益って何?」と聞けば、モデル側が丁寧に用語解説から始めてくれます。 - ステップバイステップで教えてくれる
最初は簡単な数値入力から始め、慣れてきたら「キャッシュフローの注目点を教えて」など、深掘りした分析依頼に進めます。 - 疑問点をその場でクリアにできる
「このROEは高い?低い?」と迷ったときも、すぐに業界平均や過去推移の見方を提示してくれるため、自力ではハードルが高かった財務分析もグッと身近になります。
【実践】ChatGPTに決算書を分析させる方法
必要な情報を準備する
まずはChatGPTに決算分析をしてもらうための
情報を収集していきます。
例えば「トヨタ自動車」の決算分析をしたい場合、
トヨタ自動車 決算分析
と検索します。

公式ページが出てくるため、公式ページをクリック
公式ページをクリックすると、下記のような
決算報告などのページが表示されます。
(企業によって表示形式が異なります。)

トヨタ自動車であれば、
「決算要旨」をクリックすると、
決算情報が記載された、PDFを開くことができます。

スクロールしていくと財務諸表が記載されたページがあります。

記載されている表を下記のように丸々コピーします。

Chat-GPTに分析を依頼
Chat-GPTの入力部分に、コピー内容を貼り付けます。

↑やじるしボタンをクリックすると、AIが勝手に決算分析をしてくれます。
この際に気になる情報がある場合は付け加えると、
さらに詳しく教えてくれます。
ChatGPTへの入力例(プロンプト)
【プロンプト例】
「当社の売上と利益の増減で、投資として安全かリスクが高いかざっくり教えてください」
「キャッシュ残高と借入金のバランスから、倒産リスクが高いか低いか評価してください」
「直近の営業利益率が高いか低いか、投資観点でどう判断できますか?」
「自己資本比率から見て、この会社は倒産しにくいですか?」
「配当実績と配当性向で、投資家に優しい会社かどうか教えてください」
「借入金の増減を見て、今後の金利負担リスクはどうでしょう?」
「売上成長率だけでなく利益が伸びているか、リスクを減らす材料になっていますか?」
「同業他社と比べて、この会社の安全度は高いですか?」
「株価指標(PERやPBR)の水準から見て、割高・割安でリスクはどうですか?」
AIによる決算分析のメリット・注意点
メリット
- 無料で利用できる
多くのチャット型AIは無償プランでも決算データの要約や分析が可能。初期コストを抑えて試せる。 - 手軽に始められる
面倒な設定や専門ツールのインストール不要。会話形式で質問するだけでOK。 - スピード重視
大量の財務指標や表を瞬時に読み込んで、短時間で傾向やポイントを抽出できる。
注意点
- AIの誤解・ミスリスク
・複雑な数値や文脈を誤って解釈する場合がある。
・最新の会計基準や業界特有の事情には対応しきれないことも。 - データ入力の精度依存
・読み込ませる決算書の形式や桁数がズレると、誤った分析結果を返す可能性がある。
・OCRやPDF→テキスト変換で抜け・ズレがあると、AIの回答もブレる。
最終判断は自分で行う重要性
AIの分析はあくまで「一次スクリーニング」。
最終的には、
- 自分で生データを見直し、
- 業界ニュースや経営者コメントなどの定性情報も加味し、
- 投資判断の根拠をじっくり固める
――というプロセスを踏むことが、安全・納得感ある投資意思決定につながります。
まとめ
- ChatGPTは無料でも決算分析の手助けが可能
- 会話形式で手軽に財務データを要約・解説してくれるため、まずは無料プランで試してみよう。
- 投資判断の参考情報として活用しよう
- AIから得た分析コメントを一次スクリーニングに使い、自分の視点や定性情報と合わせて判断材料を増やそう。
- さらに深く分析したい人は有料ツールや専門家の意見も検討を
- より高度で正確な解析が必要な場合は、プロ向けツールや証券アナリストのレポートも併せて活用しよう。